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Arts de la table
故宮博物院(黒釉兎毫茶箋と白茶)
3泊4日の台北滞在の中で2回故宮博物院を訪れました。
1日目はツアーで。
2日目はイアホンガイドを借りて対象を陶磁器だけに絞って見学しました。
故宮博物院(黒釉兎毫茶箋と白茶)_c0366777_20204282.jpg

旅行前に、台北在住経験があり美術にも詳しい方に見所をお尋ねしたところ・・
「とにかく歴代の官窯の磁器作品を・・」
とアドバイス頂いていて2日目は陶磁器だけを見て回ったのですが、これが大正解でした。

短い滞在時間で故宮博物院の膨大なコレクションを見て回ることは不可能ですし、すべてのカテゴリーを見て回ってコレクションを俯瞰するのもいいのでしょうが、
見たいものを絞ってゆっくりと重点的に見る・・
すごくお勧めです・・

北宋の定窯の白磁
型によって細密に表された鳳凰文
故宮博物院(黒釉兎毫茶箋と白茶)_c0366777_21044388.jpg
同じく北宋の「雨過天青」といわれた汝窯の青磁の透明なブルー・・・
「天青無紋楕円水仙盆」
これほど貫入(ひび割れ)の無いものは希有だとか・・
(下世話な話ですが、こちらは時価100億とも言われています)
故宮博物院(黒釉兎毫茶箋と白茶)_c0366777_23310825.jpg
心の底まで見透かされそうな静謐な美しさをたたえる南宋の景徳鎮窯の白磁
故宮博物院(黒釉兎毫茶箋と白茶)_c0366777_21074133.jpg
同じく南宋の龍泉窯の青磁・・
故宮博物院(黒釉兎毫茶箋と白茶)_c0366777_21092692.jpg
明の青花のコバルトブルー
故宮博物院(黒釉兎毫茶箋と白茶)_c0366777_21100816.jpg
明の宣徳時代の鮮やかな紅色の釉薬の紅釉磁器・・
この鮮やかな紅色の焼成は困難を極め希少なものだそう・・
故宮博物院(黒釉兎毫茶箋と白茶)_c0366777_21152475.jpg

明の成化時代の時価40億ともいわれる
「豆彩花鳥文高足杯」
故宮博物院(黒釉兎毫茶箋と白茶)_c0366777_21104515.jpg
等々・・
まさに希有の秘宝というに相応しいものばかりでしたが・・

今回は特にお茶との関係が深い宋の「黒釉兎毫茶箋」について書きたいと思います。

中国ではお茶は前漢の頃には四川省で商品化されていた記録がありますが、広く飲まれるようになったのは唐の時代だそうです。
遣唐使で栄忠が茶を持ち帰り嵯峨天皇に献じたそうですが定着せず、鎌倉時代の1191年に宋から帰国した栄西が筑前の背振山に茶を植えて、以後禅宗とともに喫茶の風習が広まって行ったことは皆様よくご存知の通りです。

北宋の時代にはお茶が大流行し「闘茶」というお茶の立て方と味を競う競技まであったと言います。
その時に用いられたのは「白茶」
雪のように白かった・・と記録がありますから、現在の白毫銀針などの産毛の生えた新芽の「白茶」とは違うと考えられます。
(人によっては現在の「白茶」と同じ・・と解釈なさる方もいらっしゃいます。〕
北宋の8代皇帝の徽宗は文人・画人として高い才能を示していたのですが、お茶をこよなく愛し、闘茶を好み、お茶の本「大観茶論」を記しています。
その中で「点茶の色は純白が最上級の色で青白・灰白・黄白がそれにつぐ」と記しています。
お茶が純白とは・・どのようなことをいうのでしょうか?
闘茶のときには匙でお茶を立てたと言います・・
粉茶のようなものを熱湯をいれ匙で混ぜてお茶の成分であるサポニンで泡がたち、その白さを競った・・・という説がありますが、それが一番妥当な気がします。
南宋の時代になると匙ではなく、ささらのようなものでお茶を立てて白さを競ったと言いまして、日本に伝来した茶道の源流は闘茶にある・・ともいわれています。
その「白茶」の純白を引き立てる為に作られた茶器が建窯の黒い釉薬のかかった茶器です。

こちら黒釉兎毫茶箋といい、白い筋が秋の兎の毛のようだと評され大変珍重されてきたものだそうです。
(館内もちろん撮影禁止、図録にも他の参考図書にも写真がなかったので似た感じのもの載せておりますが、故宮博物院にあるものとは異なります。
予め、お断り致します。
本物は遥かに逸品で白い筋が漆黒に美しく流れておりました・・)
故宮博物院(黒釉兎毫茶箋と白茶)_c0366777_21492973.jpg

「大観茶論」には「箋(茶器)は兎毫箋がよい」と明記しており、福建省茶事の最高級品として珍重されたと言います。

闘茶はやがて茶の立て方や味を競うものから器の善し悪しを競うものに変わって行ったそうです。

建窯の黒釉の茶碗が日本に伝わって国宝として存在しています。

それがこちら  「曜変天目茶碗」です・・
故宮博物院(黒釉兎毫茶箋と白茶)_c0366777_22552255.jpg
日本には
静嘉堂文庫蔵・藤田美術館蔵・大徳寺龍光院蔵
の3点のみしかありません
こちらは静嘉堂文庫蔵でもともとは徳川家のコレクションだったものです。
怪しいまでの美しさです・・

「曜天」も「天目」も日本での呼び方です。
「曜天天目茶碗」はあの膨大なコレクションをもつ故宮博物院にも1点も存在しません。
なぜなら、偶然現れた「曜変」の模様は中国では「窯変」といわれ不吉なことの前兆とされ、発見されるとすぐに割られてしまう運命にあったからです。
その運命を辛くも逃れ日本にたどり着いたのがこの3点の「曜変天目茶碗」ということになります。
「曜変」以外の「(黒釉)天目茶碗」は多数日本に輸出され大変珍重されています。

さて、かの「大観茶論」を記した北宋の第8代皇帝徽宗でありますが、自身も画人としての才能も素晴らしく、審美眼に優れており希有の数寄人であったといいます・・

上で紹介した北宋の汝窯の「天青無紋楕円水仙盆」も徽宗が「雨過天青雲破処」つまり磁器の理想の色として「雨上がり雲間から覗く青空」を表現するよう汝窯に命じて陶工らが苦難の末再現したものだそう・・
玉のような滑らかな質感と凝視するとわずかに見える気泡のあと・・
そして天の青と言われる翠がかった青・・
美しいという言葉では表現し尽くすことはできません・・

汝窯の青磁は60点くらいしか存在せずそのうち20点が故宮博物院にあります。
今回拝見出来たのは、2点ほど。
展示が変わる頃にまた訪れたいものです・・

さて徽宗は皇帝としての評価は低く・・
趣味に財産を費やすあまり、人民に重税を課し反感をかい、金族に攻められ北宋は滅びてしまうのです・・・。
徽宗の皇后を初め数えきれないほどいた!?側室や愛妾たちは一人残らず金族の後宮に入れられ、その後は高級娼婦にまで貶められ、そのあまりの辛さから自殺するものも後を絶たなかったとか・・

徽宗の残した超絶に美しい美術品の陰にはこのような残酷な歴史が隠されているのです。

評価が分かれるところではありますが・・
私はこのような逸脱した存在の皇帝無くして超絶な美も有り得なかったと思うのです。
超絶な美とはある意味残酷なものでありそれはお茶の歴史とて同じだからです。
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by artstable67 | 2016-01-06 00:21 | アート | Trackback(1) | Comments(0)
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