先週末の事ですが、日本茶アドバイザー講座の前日に
「芸術祭十月大歌舞伎」を昼夜通しで見て参りました。
昼夜通しの観劇はなかなか体力・気力を要するので
芝翫さん出演される
夜の部だけを拝見する事にしておりましたが、
昼の部の「マハ−バラタ戦記」の評判があまりに高かったので、
追加でチケット取って頂き昼夜通しで見て参りました。
結果・・


歌舞伎の「マハ−バラタ戦記」本当に素晴らしかった・・
演出・脚本・音楽・舞台芸術・・全てが素晴らしい・・の一言です。
純然たる歌舞伎の台詞とエキゾチックな衣装・・音楽が違和感なく調和し・・
「歌舞伎 マハ−バラタ戦記」としてのこれまで
見た事のない世界へグイグイと引き込まれていきます。
「マハ−バラタ」という原題がそのまま歌舞伎の演目として掲げられたのは初めてだそうですが、
実は前史があり
初代市川團十郎の作で天和四(1684)年2月15日江戸中村座で初めて上演され、
その後歌舞妓十八番のひとつに数えられるようになった「鳴神」という作品があります
が、その源流がインドなのだそうです。
「マハ−バラタ」が受容されたのは日本だけではなく、世界中で受容される普遍性を
孕んでいる物語です。
解釈の仕方によるところですが・・
「マハ−バラタ」は「叙事詩」である・・とすると
(私の大学時代の恩師 で平家物語研究者の日下力 元早稲田大学文学部教授の最終講義では…
平家物語がラーマヤナ物語やマハーバラタ戦記と
根本的に異なっているのは、前者が戦いを嘆く人間を描
く事により「叙事詩」ではない事だ。
と鮮やかに解説されたのでした。)
ですから、
語るにはいささかナイーブな表現を用いざるをえないのですが、
「叙事詩」とは王権保持のためや戦争肯定の物語である・・
と解釈する立場だったと致します。
しかし・・
「歌舞妓 マハ−バラタ戦記」は私の予想を良い意味で裏切ってくれたのです。
ラストで松也さん演じる阿龍樹雷が宿命を自己犠牲をもって断ち切り、
絶える事のない戦いに対する悲しみを観客に訴えかけます。
それを天空から見守る神々の眼差し・・
そして暫しの微睡みに落ちていく神々の姿で幕を閉じます。
絶える事のない戦いに対する深い悲しみ・・
を描く事によって単なる「叙事詩」ではない至高の作品へと仕上がっているのです。
素晴らしい脚本と役者さんの渾身の演技・・
機会があればまたぜひ見てみたい演目になりました。
幕間には「芸術祭御膳」を頂きました。

こちらなんと
インドにちなんで
カレーとナンがついていました。

そして食後には
これまたインドに因んで
「ラッシー」を💗

一口で飲みきってしまいます。

昼の部が終わって15分位歌舞伎座の前に待っていてまたすぐに夜の部の開場です。

夜の部・・
なんと幕間の食事が全部売り切れていましたので、
「めでたい焼き」を食べました。


餡の中に紅白の餅が入っています。
これは美味しい!
さて夜の部は
「沓手鳥孤城落月(ホトトギスこじょうのらくげつ)」から始まります。
こちらはかの坪内逍遥の作。
なんと・・
歌舞伎座では昭和55年4月以来37年ぶりに演じられるとか・・
坪内逍遥の歌舞妓作品では「桐一葉」が有名ですが
こちらはその続編に当たる物語・・
つまり大坂夏の陣に題材を取った
「豊臣家最後の一日」を描いた物語です。
この舞台、すでに風前の灯となった豊臣家の玉三郎さん演じる淀の方の錯乱ぶりが
見物なのですが・・
大阪城の奥殿が暗闇の中に浮かび上がる場面から
始まります。
私この日は朝4時半に起きまして・・
昼の部の「マハ−バラタ戦記」鑑賞でかなり気力と体力を奪われておりまして・・
めでたい焼きでお腹もいっぱいになりまして・・
前から四列目の花道横・・という素晴らしい席にも関らず・・
徳川方へ逃走しようする千姫・・
絶望のあまり錯乱する玉三郎様演じる淀の方・・
その様子を見て苦しむ七之助様演じる秀頼・・
石火矢が命中して壁が崩れていく極限状況を・・
「桐一葉」が浄瑠璃など音楽的効果や舞踏的要素も用いた江戸歌舞伎の
要素を踏襲していたにも関らず、
「孤城落月」は純然たる台詞劇・・
そう・・
睡魔が襲って来て
なんども気絶してしまったのです・・😢😢
(何と言う事もったいない事をしてしまったのでしょう)
睡魔に襲われながらも、
「滅び往く大阪城の本丸の前で居眠りするなんて・・」
そして・・
「七之助様が出ている舞台で寝るなんて・・」
と自責の念にはげ===しく苛まれていたのでした。。
そして夜の部2作目は
「漢人韓文手管の始(かんじんかんもんてくだのはじまり)」

芝翫さん演じる 大通辞 幸才典蔵・・
すごかったな〜
男の嫉妬する姿の滑稽さや醜さをたっぷりと見せつけてくれます。
そして七之助様が綺麗なだけが取り柄の空気を読めない
傾城 高雄を演じています。
今回なんと三つの役所の七之助様を拝見出来ました。
美しいだけの恋する傾城 高雄
「マハ−バラタ戦記」では最初は異父兄弟に対し敵対心をあらわにしているが
月日が経つとともに自分が間違っているのではないか・・と思い始める
鶴妖乃王女。
Sッポイ七之助様が繊細な感情に目覚めていく様は見事としかいいようがなく・・
豊臣秀頼(は寝ていたのでよくわからない)
どれも見事でしたが、七之助様ファンとしましては
「桜の花の満開の下」のサイコパスっぽい夜長姫や
「女暫(おんなしばらく)」の静御前
を見たときみたいな
鳥肌が立ち、ゾクゾクするような・・
見てはいけないものを見てしまった
感じはなかったかもしれない・・
(だめだといってるのではなく、私の個人的な感想として、夜長姫と静御前がすごすぎて・・ということです。)
最後は・・
「秋の色種(あきのいろくさ)」
玉三郎さまの舞です。
やはり玉三郎さまは絶世の美女を演じて舞う姿が一番美しい・・

昼も夜も見応えのあるまさに「芸術祭」の名にふさわしい力作揃いの十月歌舞伎座でした。
「マハ−バラタ戦記」は再演の折には皆様ぜひご覧ください・・
(私は眠ってしまった「孤城落月」をもう一回見たいものです・・😢)

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