久しぶりとなってしまった東京美術鑑賞。
上野のクリムト展と迷いましたが、友人の勧めで、
乃木坂の国立新美術館の
「ウィーン モダン展」へ。
こちら本当に素晴らしい!
何が素晴らしいかというと、その切り口。
ウィーン世紀末芸術、クリムト、エゴン シーレ、、
ややもすると単独で語られるがちなテーマを
①マリア テレジアのヨーゼフ2世の統治下における啓蒙主義
②ビーダーマイヤー
③19世紀半ばの会社創設ブーム期
という先駆となる三つの時代から、絵画のみならず、
陶磁器、家具、衣装、宝飾品、銀製品、様々なミニチュア模型、彫刻を使って、
多角的にプレゼンすることにより
なぜ、ウィーンに、そして世紀末に頽廃的な芸術が生まれそれがウィーン モダンへと至ったのかを鮮やかに魅せてくれていることです。
①の啓蒙時代を牽引したのは
フランスのように哲学者ではなく、統治者である
マリア テレジアと皇帝ヨーゼフ2世であったことは特筆すべきでしょう。
マリア テレジア
その息子の皇帝ヨーゼフ2世
皇帝の狩猟地であったプラーターや夏の離宮アウガルテン宮殿を誰もが使える公園にし、
かの有名なウィーンの総合病院をつくりました。
また、啓蒙の担い手の重要人物であったのは
あの、作曲家モーツアルト‼️
有名なオペラ「魔笛」はフリーメイソンの一員であった
彼の思想の現れなのだそうです。
(28年も前の事になりますが、モーツアルトの没後200年の年にウィーンへ行き、オペラ座にて
モーツアルトの「魔笛」を見ました。)
つづく②ビーダーマイヤーの時代。
これは食卓芸術の様式の講義をするときにもサンプルが少なくて、
困っていましたが、
ナポレオンの侵略時代が終わりウィーン会議でヨーロッパの再編成が行われていた時代、
厳しい検閲を強いられる中で、
人々の関心は、簡素な様式や家庭生活に向いていったこと、、
この文脈を理解するがまず大切なのです!
ビーダーマイヤーはインテリア様式で語られる事が多いのですが、
銀製品もたくさん展示してありました。
イメージしていたものより、すごくモダンでおしゃれなデザインのものばかりで、
現代にリバイバルしてもきっと新しいと感じるようデザインなのです。
そしてビーダーマイヤーを誰よりも体現していたのは
なんと
あのシューベルトなんです!
シューベルトが作曲家仲間と開く音楽発表の夜会シューベルティアーデの様子
ここに描かれているのが典型的なビーダーマイヤー様式だそうです。
つづく、③会社創設ブーム期の君主は
フランツ ヨーゼフ一世
あの絶世の美女
皇妃エリザベート(シシィ)の夫と、
言った方がピンときますよね。
こちらが皇妃エリザベート
妻があまりにも有名なため、スポットがあたりにくいのですが、
ヨーゼフ一世の功績は何と言っても、
ウィーンの街に巡らされた中世時代の市壁を取り払って、
環状道路(リンク通り)を作ったこと‼️
これにつきます。
市壁がある限りその街は中世時代のままですし拡張もしませんし、
外部との交流も限定されます。
これによりウィーンの街の近代化が揺るぎないものとなります。
この時代の花形の画家は
ザルツブルクからフランツ一世によって招聘された
ハンス マカント
この時代の大スターで売れっ子だった彼の書いた肖像画
画家のプリンスがハンス ならば
音楽のプリンスはそう
あのヨハン シュトラウス✨
美しき青きドナウでウィーンをワルツの街として世界中に
印象付けた立役者です。
そして愈々1900年
世紀末の時代がはじまります。
クリムトは頽廃的な絵画のイメージですが、
ウィーン市議会からの依頼で、描いた
(皇帝からではなくウィーン市議会からの依頼で、、
というのは重要なところですね。
ブルジョワジーが力を持ちこれから文化の推進者となっていくということですから、、)
「旧ブルク劇場の観客席」
そして
「愛」
ゾクゾクするほど美しくて頽廃的な絵画です…
やっぱり恋は死への希求なのだと
何だか見てはいけないものを見てしまったような、、
やはりクリムト凄い!
スキャンダラスで、いつも着ていたスモッグの下には
何も付けていなかったとか、
常に何人もの女性モデルが待機していてクリムトの声がかかるのを待っていたとか
女好きで有名だったクリムトが唯一心から尊敬し、
最後まで交流のあったエミーリア
の肖像画がこちら。
(ここだけ撮影オッケーなんですよ!!)
エミーリアのドSな眼差しに見下ろされる感じ…
もう堪りません…
展示のアングルも最高‼️‼️‼️
もはやクリムトの愛した女性という文脈でしか語られない
エミーリアという女性は自立した職業婦人でありデザイナーであり、
この肖像画からはクリムトの
彼女に対する限りないリスペクテーションが感じられます。
クリムトが亡くなったあと、エミーリアは自分に関する資料を全て、
クリムトのアトリエから捨て去ったとか。
ヴァールにつつまれた2人の関係を解く鍵はこの絵画にあるのでしょうか。。
そしてエゴン シーレ
これまた、ウィーン世紀末の画家を語る上で避けることはできない画家で、やはり
スキャンダラスな逸話に尽きない彼。
ウィーン世紀末絵画が特徴的なのは、
1900年以降の絵画は、写真の発達により肖像画のように写実的に描く意味を失います、
そんな中で
カンディンスキーやミロのように抽象画に向かっていった、フランツ、スペインそしてドイツに
比してエゴンシーレが描いたのは
人間内部の悲しみ、苦しみ、残酷さ…
平行して作られていたウィーン工房の
何ともモダンなデザインの銀製品
リンク通りの新旧混ざる様式の建物、
美術史美術館、
トラム、
モーツアルトチョコレート
28年前の記憶を辿りながら、
また、ウィーンを訪れたくなった展覧会、
そして上野のクリムト展も行かなければ‼️
(金曜日は20:00まで開いてる国立新美術館。
18:00以降の入館が空いていておススメです。)
そして夜の国立新美術館もとっても素敵です。