今年も終わろうとしていますが…
今年初めての歌舞伎座へ。
午後の部、最初の演目は「松浦の太鼓」
顔見世ではよく上演される忠臣蔵ものです。
お家ファーストの時代、忠義のみが正義であった時代の予定調和の
物語が
なんでこんなに心に沁みるのか。。
昨年も見たはずの「松浦の太鼓」ですが、今年はまさに
「古典浴」の気分。
すっかり癒されてしまったのでした。
次の「鎌倉三代記」はモデルは大阪夏の陣の登場人物、
そして義太夫狂言。
複雑な人間関係と、義太夫のリズムに睡魔が。、
私、義太夫を聞くと眠くなってしまうのです、、
酔眼朦朧としながらも耳に残ったのは。。
三浦の助吉村のモデルとなった木村重成は、
豊臣秀吉の家臣で大阪夏の陣で討ち死にしたのですが、、
その首実検の折に徳川家康が、感動したとか。。
なぜなら髪から香のよき香りがして生臭さが全くなかったからとか。。
木村重成は、イケメンであり風流な人であったと言われていて、
この鎌倉三代記でも、敵方の姫に恋慕される色男ぶりなのですが、、
姫といよいよ別れの場面にて
義太夫が「別れは蘭奢待の香り。。」と唄っていたのが
興味深かったのです。
すでに死を覚悟していた木村重成が髪に香を焚きしめていたため、
兜からよ蘭奢待の香りがしたというのです!!
まさか!!
蘭奢待はご存知、正倉院の宝物殿の中にあり、それを切り取ることができたのは、
織田信長や明治天皇やごく限られた人達であり
「清涼山にすむ獅子がその露を呑むとされる牡丹の花の香り」
こちらは歌舞伎座にかざってある
川端龍子の獅子と牡丹
ここでは、
蘭奢待の香を焚きしめていたというのではなく、
それほどまでによき香りがした…と言う事なのでしょう。
三つ目の演目は
華やかな舞踏。
「春朝娘七種」は、新春に演じられることの多い曽我物。
暗転から定式幕が取り払われると、一気に華やかな舞台。
歌舞伎の舞踏らしく衣装の動きで魅せる舞台は、
晴れがましく華やかで、舞踏での切れって本当に清々しい!
忠臣蔵にしても曽我物にしても
どちらも仇討ちをする忠義の物語。
忠義とはいえ、人を殺めるのですから、切腹覚悟の仇討ちですが、
江戸時代ですとこれが絶対的な正義であり忠義でした。
これが繰り返し演じられるのは、プロパガンダというよりは、
庶民の「カタルシス」と捉えていいのか、、と思ったしだい。
午前の部の「マハーバラタ」か、もしただの叙事詩であれば、
戦争礼賛の物語になりかねないのですが、
人の憐れを描けば、普遍的なストーリーとして古典となり
何度も上演されるのでしょう。