やっと行けました今年初めての京都のお料理教室。
ここに来るとスッと背筋が伸びます。
一品目は
塩原の筍の木の芽和え
春の訪れを感じさせる一品目
疲れた体に染み渡ります・・
2品目は谷崎潤一郎先生お好みの白ぐじ潮汁
揺蕩う春の海が口の中に広がる幸せよ・・
ぐじとは甘鯛の事を京都でそう呼んでいると思っていたのですが
正確には
「若狭湾で水揚げされ浜で塩をして小浜ルートで陸路京都に運ばれたもの」だけを
ぐじといい大変な高級魚なのだそうです。
谷崎潤一郎先生は来られるたびにこの潮汁を所望されたのだそうです・・
焚き合わせは、筍、鯛の子、蕗と木の芽
うすい豆の玉七五三(七五三と書いてしめと読みます)
こちらは白洲次郎先生お好みの羹
鰆と白葱と粟麩
しっかりとした味付けで前半の素材を致した味付けとの強弱がまた見事なのです。
そして大好きなかき揚げ天丼
これだけでも近くに食べさせてくれるところがあったらいいのに・・
と思ってしまいます。
お教室の後は、奥のサロンに場所を移して
グラナダ在住のピアニスト西澤安澄さんによるサロンコンサート!
なんと贅沢な午後・・
サロンのピアノ「ベヒシュタイン1915」は名品ながら弾きこなすのが難しいのだとか・・
最初はバッハ。
森川先生によると・・
バッハの音楽が頂点にあるような世界は実に京都的だとか・・
「何か足りない・・」くらいの塩梅が「古典」なのだとか。
こちらのお料理教室に通い始めて3年目でやっとなんとなくその意味がわかったような
気がします。
次は私が最も好きなオペラ「ラボエーム」の「ムゼッタのワルツ」!!!
「ラボエーム」はミラノのスカラ座で見た思い出深きオペラ。
ちょとした事件もあり私にとっては忘れられない曲目でもあります。
元々はピアノ曲として作曲された「ムゼッタのワルツ」を今日はピアノで
。
なんて艶やかな演奏!
ベヒシュタインの作成された1915年という年代こそが重要で、1914年以降第一次世界大戦が
始まるとベヒシュタインのような芸術性の高い楽器は贅沢品とみなされ、生産が中止されたそうです。
こちらのピアノは
ベルエポックのヨーロッパの文化が最も爛熟していた時期のベヒシュタインで
まさにその時代にラベル
によって作曲された「なき王女のためのパヴェーヌ」が演奏されます。
この楽曲は
ベラスケスの「マルガリータ王女」の絵画からインスパイアされたもの。
この曲は森川先生が最も好きな曲だそうでこの曲のようなお料理を作りたいとか・・
なんとも甘く哀しく繊細な曲・・
しかしよく聴くとピアニッシモとフォルテが弾き分けられ、
先生がよくおっしゃるお料理にも強弱が必要・・
との意味がわかります。
そして
最後に西澤さんが彼を追いかけ続けてスペインに渡ったというスペインの作曲家「ファリア」
の作品から1曲。
ファリアは・・
「日の沈むことのない国」と言われたスペインが最後の植民地を失った時代に生き、
裕福な環境に生まれながらも最後はフランコ将軍の独裁体制に反対して病気の身ながらも
自分が政治的に利用されるのを嫌いアルゼンチンに亡命し極貧の中で死したというドラマチック
な人生を送った人。
スペインという国が衰退した理由は「産業的な投資」でなく大学を建設したり「文化的な投資」
ばかりをしてしまったからだ・・という西澤さんのトークも非常に興味深かった。
ポルトガル・・スペイン・・オランダ・・イギリス
大航海時代の覇権の移り変わりを「産業的・工業的」な力の推移としてしかとらえていなかった
私にはちょっと衝撃的な視点・・!!
人生を賭けてファリアを愛する西澤さんのファリアは凄かった・・💦
その人生を賭けて音楽を追求する西澤さんに呼応するかのように森川先生からも
溢れ出す音楽論と京都学そしてご自身の料理への思い・・
料理も音楽も予定調和ではないこと・・
時代とそこにいる人と対話して出来上がる先の読めない芸術品であること・・
停滞していた心に様々なインスピレーションを得て、花見の季節に京都にいきながら
桜の一つも見ずに新幹線に飛び乗ったのでした
枯れぬことなき花を一輪抱えながら・・・