連休前のことですが初めて松濤にある戸栗美術館へ。肥前磁器のコレクションで名高い美術館ですが、九州に住んでいる私にとっては、限られた時間の東京滞在時間中に有田に行けば沢山見ることができる肥前磁器をわざわざ東京で・・と思っていましたが前言撤回!!今期のテーマは「鍋島と金蘭手」
伊万里に行っても目にすることのない献上品としての「鍋島」があることあること・・
江戸時代の鍋島藩の献上品としての鍋島の完品は一個(一皿?)3億と言いますから・・
この展示だけでも・・・・
(いや、やめましょう。。下世話な話は・・)
美術展とはコレクションをどんな切り口で見せるか・・がキュレーターの腕の見せ所
ですが、こちらの「繰り返し文様」という「文様」をテーマにした展示は
すごく凄〜〜く勉強になりました。
平日ということもあり、ほぼ貸切状態・・メモを取りながら2時間半かけて
器とゆっくり対話しながら鑑賞しました。
(以下は自分の記録用として)
鍋島焼は献上品として10客揃えで作成された。
色は多くてもの4色遣い。
鍋島特有の文様としては・・
椿文
更紗文
唐草文
牡丹唐草文
宝尽くし文
紫陽花文
水仙文
桜樹文
団花文
高台があるのが鍋島の特徴ですが
高台の文様も代表的な櫛目以外に・・
櫛目
雷紋
剣先文
牡丹折枝文
四方襷文
七宝結文
と沢山のバリエーションが・・
金蘭手の様式が出てきたのは江戸時代も後期・・
元禄時代ですが
金蘭手とは・・
区画割や窓絵を多用して器面を分割して、全体をさまざまな文様で埋めていく技法です。
その定番文様としては
雪輪文
四方襷文
唐花文
亀甲文
赤玉瓔珞文(この文様は京焼にもよく見られますね)
宝相華唐草
桐菱文
十字牡丹文
波に梅花文
だみ染めの丸紋
色絵草花丸紋
色絵龍唐文
唐花
石畳文
荒磯文
花籠文
欄干に花籠
珍獣文(龍・鳳凰・亀・麒麟)
文様のことがわかると器の時代が少し読み解けるようになりますね・・
それから大切なのは裏側の「銘」
江戸時代は有田・伊万里は鍋島藩の庇護にあったため
窯元単位では活動していなかったので、「銘」がなかったり
中国風を真似たりしています。
この美術館は鍋島藩のお屋敷の後に建設されたとか・・
ロビーからは美しい庭園が望めます。
(散策はできません)
戸栗美術館の創設者、
戸栗亨氏は
日本の美術品が散逸するのを危惧して、
当初は闇雲に美術品をコレクションしていたそうですが
指南してくれる人やよき美術商との出会いで、
肥前磁器をそれも江戸時代の初期伊万里・鍋島・柿右衛門・金蘭手に絞って
コレクションされたそうです。
このような個人コレクターが体系的に計画して、購入し、美術品の国外流出を止め、コレクションするのみならず、美術館という形で一般人に
公開してくれているのは大変社会貢献度の高い素晴らしい取り組みであることよ・・
と感動しため息をついたことでした・・
先日私のLINEグループの中でも、美術や文化にすごく詳しい方々のグループがあるのですが・・
(色々な情報をそこで教えていただいています)
京都の思文閣出版の開催するオークションの話題が出ていました。
骨董品のオークションは真蹟の保証はしません・・
と注意書きしてあるオークションが多いのですが、
こちらは
しかるべき調査機関で調査した「真磧保証書」がついていることが特筆すべきことでしょうか。
つまり、思文閣の入札会の出品されたものは本物!ってことです!
その目録
最近では亨保年代の「古事記」の写しが出品され1500万で落札されたとか・・
高額なところでは8000万で落札された書があるとか・・
(どなたの書だろう)
一つ懸念されるのは、円安に乗じてこれらの美術品が海外に流出してしまわないか・・
ということです。
美術品はお金のあるところへ流れていく宿命ですから・・
戸栗亨氏のような気概のある資産家が円安の日本の美術品の海外への流出を防いでくれる救世主として
現れないか・・と願うばかり。
しかしながら、美術品の流出を抑えるだけでは、日本経済にとって、応急処置にすぎません、。
産業として工業として日本が国際的競争力を取り戻し外貨を獲得するためには、何ができるのだろうか。。
輸出品として、肥前磁器が蘇る日がくるのだろうか…
取り留めなく思いを巡らせながら
松濤のお屋敷街を抜けて渋谷駅へ…。