先週の25日のNHK総合で放送された日曜美術館。
タイトルは「女神の瞳に秘められた謎 ルネサンスの巨人ボッティチェリ」
ご覧になった方も多いかと思います。
現在、渋谷Bunkamura ザ ミュージアムで開催されている「ボッティチェリとルネサンス フィレンツェの富と美」展にあわせての企画放映のようです。
「ボッティチェリ」「ルネサンス」といえば、「印象派」「フェルメール」と並んで、企画すれば確実に人を動員することが出来る人気美術展企画です。
そしてボッティチェリといえばこちらの絵画「ビーナスの誕生」
(上は絵画の一部)「フィレンツェのウフィツィ美術館所蔵」
あまりにも有名で、私の中で「モナリザ現象」(色んなところで目にしすぎて通俗的に見えてしまう)を引き起こしてしまっていた絵画ですが、今回の日曜美術館を見て、実はよく知らないこともあったのだと…
今日は反省も込めて番組の中から抜粋して。
このビーナスの眼差し、じっとご覧になった事ありますか?
憂いを秘めてどこか悲しげです。ボッティチェリの描く女神や女性のは物憂い眼差しの女性が多くそれが絵画に奥行きを与えているのですが、完璧な美女ビーナスがどうして悲しげな眼差しをしているのかあまり考えた事がありませんでした。
これはビーナスが誕生した瞬間を描いた絵画ですが、生まれた時から完璧な美女。。それも神だから・・と深く考えずにいましたがビーナスの誕生には次のような神話があるのです。
これはギリシャ神話の中の物語なのですが、ウラノス(左)父をクロノス(右)息子が殺す場面の絵画です。
ギリシャ神話では最初にカオスがありそこからガイア(大地の女神)とタルタロス(冥界)とエロス(愛の神)が生まれ、ガイアはウラノス(天空の神)とポントス(海洋神)を生んだといいます。
ガイアがウラノスと結婚して生んだのがクロノス(大地の神)。
ところがウラノスはガイアとの間に生まれた気に入らない子供をどんどん殺したのでガイアが怒り、クロノスにウラノスを殺す事を命じて鎌を渡します。
そして上の絵画のようにクロノスは父ウラノスを殺し、海に捨てその泡から生まれたのがビーナスだったとか。。
壮絶な父親殺しの果てに、子供時代もなく完璧な美女として生まれてしまった・・
ビーナスはそういう出生の悲しみを眼差しとすこし首を傾げた表情に表現しているそうです。
そう思ってみると私の中で「モナリザ現象」を起こしていたこの絵画に新たな魅力と奥行きを感じます。
ルネサンスを代表する画家として後世の名声を欲しいままにしているボッティチェリですが、パトロンであるロレンツォ・デ・メディチが亡くなってからは、不遇の時代を迎えます。
もっとも、そのころメディチ家の銀行も倒産しフィレンツェ自体が後ろ盾を失うのでフィレンツェのルネサンスの最盛期は終わったのですが。。
これぞ理想の女性ともいえるビーナスを描いたボッティチェリ・・実は女性に縁がなく一生独身だったとか。
それで漫画「チェーザレ 破壊の創造者」の作者 惣領冬美さん曰く、このビーナスはいわゆる「萌え絵」だとか。。なるほど〜
さて、そんなボッティチェリの自画像
に私がウフィツィ美術館で遭遇した時の事・・・
彼の自画像は「東方三博士の礼拝」という絵画の中の右端に描き込まれており、その絵画を見た方なら皆さん感じられると思うのですがとても強い目力がありこちらをすっくと見据えてきます・・・心の奥まで見透かされそうでゾクッとしたのをおぼえています。
(「東方三博士の礼拝」絵画の一部)(フィレンツェ ウフィツィ美術館所蔵)
この目ですよ・・
彼がどれほど後世に輝く名声を残したとしても、限りある命、この絵画の前に立つ者は「今を生きる鑑賞者」に対する彼の嫉妬をこの視線から痛いほど感じてしまい心かき乱されるのでしょうね。
そうして、ロレンツォ・デ・メディチの「バッカスの歌」の一節が頭の中をリフレインして・・
楽しみてあれ、明日はさだめなき故・・